戦時中の日本酒とは?「金魚酒」や三倍醸造酒が生まれた理由を解説

お酒のこと

現在、日本酒は高品質なお酒として世界的にも人気があります。

しかし戦時中の日本では、深刻な米不足や物資不足によって、日本酒造りは大きな変化を余儀なくされました。

この時代には、

  • 金魚酒(水で薄められた日本酒)
  • 級別制度
  • 三倍醸造清酒(三増酒)

など、現代ではあまり知られていない日本酒文化も誕生しています。

この記事では、

  • 戦時中に日本酒がどう変化したのか
  • 金魚酒とは何だったのか
  • 三倍醸造酒が生まれた理由
  • 現在の日本酒表示制度との関係

について解説していきます。




戦時中の日本酒事情|深刻な米不足が始まりだった

昭和に入り戦争が激化すると、日本は深刻な物資不足に陥りました。

当然、日本酒の原料となる米も不足し、多くの酒蔵が十分な酒造りをできなくなっていきます。

さらに、

  • 酒蔵の廃業
  • 酒米不足
  • 配給制の開始

なども重なり、日本酒の生産量は大幅に減少しました。

そんな中で登場したのが、

「金魚酒」

と呼ばれる日本酒です。

金魚酒とは?

水で薄められた戦時中の日本酒

金魚酒とは、

「金魚が泳げそうなくらい薄い酒」

という意味の俗称です。

現在では考えにくいですが、当時の日本酒は流通の過程で大量の水を加えられていました。

なぜ金魚酒が生まれたのか?

最大の理由は、米不足による日本酒不足です。

さらに当時の酒税制度には、

「加水すればするほど税負担が軽くなる」

という問題もありました。

そのため、流通の途中でどんどん水が加えられ、結果として非常に薄い日本酒が出回るようになったのです。

この問題は、

「水酒問題」

として社会問題にもなりました。




日本政府による品質基準の制定

公定価格制度の開始

1940年(昭和15年)、政府は金魚酒問題を改善するため、日本酒を以下の3種類に分類しました。

上等酒

  • アルコール度数15%以上
  • 原エキス分30%以上

中等酒

  • アルコール度数14%以上
  • 原エキス分28%以上

並等酒

  • アルコール度数13%以上
  • 原エキス分25%以上

そして、それぞれ公定価格が設定されました。

しかし問題は残った

ただし、この基準では、

  • アルコール度数
  • 原料量

が重視される一方で、

  • 香り
  • 飲みやすさ

など、日本酒本来の品質は評価できませんでした。

官能検査の始まり|現在の品質表示の原型

そこで酒造組合中央会は、

「官能検査」

を導入します。

これは現在でいう“テイスティング評価”のようなものです。

香りや味わいをチェックし、

  • 上等級香
  • 中等級
  • 並等級

などに分類していました。

この仕組みは、現在の日本酒の品質表示制度の原型とも言われています。




太平洋戦争でさらに悪化した日本酒事情

太平洋戦争が始まると、物資不足はさらに深刻化しました。

酒米は配給制となり、日本酒造りはますます厳しくなります。

そして1943年(昭和18年)には、

「日本酒級別制度」

が始まりました。

日本酒級別制度とは?

日本酒級別制度とは、

品質に応じて酒税を変える制度

です。

当時は、

  • 特級
  • 一級
  • 二級
  • 三級
  • 四級
  • 五級

に分類されていました。

この制度は戦後も続き、1992年(平成4年)まで継続されます。

三倍醸造清酒(三増酒)の誕生

米不足から生まれた特殊な日本酒

戦争が長引くにつれて、米不足はさらに深刻化しました。

そこで考え出されたのが、

「三倍醸造清酒(三増酒)」

です。

これは少ない米で大量の日本酒を造るための方法でした。

三倍醸造酒とは?

三倍醸造酒とは、

  • アルコール
  • ブドウ糖
  • クエン酸

などを加え、通常の約3倍量まで増やした日本酒です。

もともとは満州で研究されていた技術でした。

当時の満州では日本人移住者が多く、日本酒需要が非常に高かったため、大量生産技術の研究が進められていたのです。

当初は味に問題もあった

研究初期の三倍醸造酒は、

  • 味が不安定
  • 香りが弱い

など品質面で問題もありました。

しかし研究が進み、調味アルコールの技術が向上したことで、次第に飲める品質へ改良されていきます。

1949年(昭和24年)には全国の酒蔵で試験醸造が行われ、翌年から本格的に普及しました。

戦後の日本酒|級別制度の終焉

戦後も日本酒級別制度は続いていました。

しかし次第に、

「級と品質が一致していない」

という批判が高まっていきます。

例えば、高品質な日本酒でも、あえて審査を受けず、

「二級酒」

として販売する酒蔵も増えていきました。

結果として、

  • 高品質な二級酒
  • 有名無名に関係ない実力派酒蔵

が増え、級別制度は徐々に意味を失っていきます。

そして1992年(平成4年)、級別制度は正式に廃止されました。

現在の日本酒分類へ

級別制度廃止後、日本酒は現在のような分類へ変化していきます。

現在主流となっているのが、

  • 普通酒
  • 純米酒
  • 吟醸酒
  • 大吟醸酒

などの

「特定名称酒」

による分類です。

現在では、

  • 精米歩合
  • 原料
  • 製法

などが重視されるようになり、日本酒はより品質重視の時代へ変わっていきました。

まとめ|戦時中の日本酒は“苦境の中で生まれた歴史”だった

戦時中の日本酒には、

  • 金魚酒
  • 級別制度
  • 三倍醸造酒

など、特殊な文化や制度が数多く存在していました。

背景には、深刻な米不足や戦争による物資不足があります。

一方で、その時代の試行錯誤があったからこそ、

  • 品質表示
  • 官能検査
  • 現代の分類制度

など、日本酒文化の基礎へ繋がった部分もあります。

普段飲んでいる日本酒にも、こうした歴史があると思うとまた違った見方ができるかもしれませんね!

最後までお読みいただきありがとうございました。

それではまた!




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